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スティーブン・ジョーゼフ劇場(STEPHEN JOSEPH THEATRE)の新しい空間について [劇場]

1713572 1713541 1713551 1713549 1713552 1713544      上段:スティーブン・ジョーゼフ劇場        中段:ボックスオフィス(左)・ショップ(右)         下段:アラン・エイクボーン氏(左)・スカーバラの城壁と海(右)

 

    スティーブン・ジョーゼフ劇場(STEPHEN JOSEPH THEATRE)の新しい空間について

 1955年、スティーブン・ジョーゼフによってスカーバラの公立図書館の一階に小さな円形劇場が創られ劇団活動が始まりました。(スティーブン・ジョーゼフは、イギリスにTHEATRE IN THE ROUND・円形劇場を最初に導入したことで知られています。)
 1967年スティーブン・ジョーゼフの他界によって、彼の意志を引き継いだアラン・エイクボーンが芸術監督に就任し、劇団のために積極的に作品を提供し且つ演出を手掛けるようになりました。その後、1976年元中学校を円形劇場に改造し、スティーブン・ジョーゼフ劇場の活動の拠点として1995年まで数多くの作品を上演し世に送り出してきました。
 現在の新しいスティーブン・ジョーゼフ劇場は、スカーバラ駅の前にあります。1988年に閉鎖された旧映画館オデオン座を改装して、1996年劇場と稽古場・事務所・レストランなどを有する建物に生まれ換わりました。柿落としは4月24日、エイクボーン作「バイ・ジーブス」で幕を開けました。
スティーブン・ジョーゼフ劇場には、THE ROUNDとTHE McCARTHYの二つの劇場があります。
 THE ROUNDはオープン・ステージでアリーナ形式の劇場で、舞台空間と観客席が一体となってひとつの空間の中に共存しています。舞台を四方から取り囲む客席(404席)は程よい勾配と高さ(多層)でとても観やすく、空間的に一体感があります。また、大劇場と違い俳優と観客との距離が可能なかぎり近づくことによって融和でき高い臨場感と親近感を創り出す空間といえます。
 しかし、アリーナ形式の劇場を使うにはマイナス面も多く、色々な問題点があります。場面転換などの視覚的表現は極めて難しく、大きな舞台装置や小道具などを飾る事も出来ません。また、音楽や効果音が空間の中心近くに集中しすぎて音響的に不利を生じる事さえあります。ですから演出的視点から様々なことを把握して、俳優の登退場や全体構成を考えなければなりません。これは、大変重要なことです。
  客席で開演時間を待っていると、不思議とこの空間に吸い込まれていた事に気がつきます。この空間でドラマがどのように展開していくのか、視覚的にどう魅せてくれるのか気持ちがわくわくしてきます。エイクボーンはこの知りつくした劇場空間を常に有効的に使用し、観客に最高の感激を与えるべく劇的瞬間を模索しながら演劇創造を楽しんでいるかのように感じとれます。 
  舞台には、6m×6mの迫り《リフト》が設備され舞台転換をスピーディに行うことも可能です。(稽古場からセットを上げる事もできます。)この広さは、以前のWEST WOOD THEATRESと同空間で創られている事は、エイクボーンがスティーブン・ジョーゼフの意志を頑なに守っている事が理解できます。
 舞台の天井は、(照明グリッド・The mesh lighting access grid /カナダ製のネットでテンションワイドグリッドと言われている。)トランポリンが備え付けられている状態で、ネット上を自由に歩く事ができるようになっていて容易に照明の仕込みや操作(フォーカシング)ができるようになっています。(舞台が丸見えで宙に浮いている感じで高所恐怖症のスタッフには怖いかもしれません。)
  このシステムはスティーブン・ジョーゼフ劇場において重要なものであり、劇場の特徴ともいえます。これは現在イギリス国内に3箇所しか設置されていません。
(STEPHEN JOSEPHTHEATRE・SOUTHAMPTON・ROYAL ACADEMY OF DRAMATIC ARTです。)RADAの劇場では、20名程のスタッフコースの学生が一堂にあがって照明実習を行なっていると、ニコラス・バーター校長先生が説明をしてくださりました。慣れれば非常に効率が良くスピーディ且つ安全に作業ができるとの事でした。日本の劇場でも使用すればとても便利だと思いますが。特にこれから建設する劇場は考えてみる価値はあると思います。特に、天井からの落下防止(安全対策)にもなりますし、劇場関係者は是非このシステムを必見です。  
 THE McCARTHYはエンドステージ形式(プロセニアムに近い形になっているが、しかしプロセニアムはまったくなく大きな空間の中に舞台と観客席が設けられています。)の空間で週末には映画館としても利用されています。
客席数は165席、旧オデオン座で使用されていた椅子をリフレッシュして設置するなど、暖かさと親密さを感じさせられる劇空間です。  
 その他劇場内の施設には、調光室、音響室、ミーティングルーム、楽屋、衣裳室、稽古場、小道具倉庫、道具製作場、ボックスオフィスなどが効率よく配置されています。レストラン・バー・ショップなども充実していて地元の人々にも幅広く利用されています。また、劇場中心部には吹き抜けになっている中庭があり、この吹き抜けから太陽の自然な光がガラスを抜けてグリーンルームを照らします。グリーンルームとは、スタッフや俳優たちが自由にコミュニケーションを取る憩の場で、楽屋やスタッフルームと違い劇団のメンバー達が自由にコーヒを飲んだり、読書をしたり、編物をしたり、それぞれが寛ぐ談話室のような所です。この場所から、それぞれの部屋(事務所や楽屋)に行けるようになっていて機能的な設計になっています。日本の公共文化ホールや民間の劇場の楽屋は、プライベートを守ることでそれぞれが個室に入りっぱなしになってしまう傾向がありますが、時間のある時に出演者やスタッフがグリーンルームで交流を図る事は非常に意義深いことであると感じます。
このような場所を日本の劇場でも増やしてくれることをせつに望みます。 
 付記:スティーブン・ジョーゼフ劇場の建設にあたって、日本大学芸術学部・日本大学芸術学部演劇学科では寄付を致しました。そのためロビー壁の寄付者一覧ボードには大きく大学名が、また客席椅子のプレートに学部名と学科名が刻まれています。

劇場データ
ADMINISTRTION:
Props:Yorkshire College.
Lessees:Scarborough Theatre Trust Ltd
Artisti Director.Alan Ayckboum
Financial Administrator.Keith McFarhane
Theatre Manager.Zoe Naylor
Production Manager.Alison Fowler
Press Officer.Jeannie Swales
Marketing Officer.Rob Lines
Policy:Repertory.April to January.New plays everyseason.
Perfs:7.30p.m;(Sat.3p.m.&7.30p.m.)
Seats:The Round 406 max;McCarthy 165max.
Restauant,Bar.
Studio Theatre seats 75for Lunch-time and Late Night plays and music.
TECHNICAL:
Stage(The Round):Perfoming area 6.7m×6.1m.
3Vom entrances.Fixed grid 4.26m.
Lighting:Strand Gemini 2+withFXpanel,floppy disc,130 patches to 60×2.5dimmers.Lanterns: 52×500w Fresnels,22×1kw Fresnels,
33×100w Profiles,12×1kw Profiles,16×650PC‘s,3×Par64,10×500w Noctume Floods,6×CCT colour wheels.
Sound Equip:DDA D Series 16-8-2 via Matrix to 8×H/H TPA 50w amps via speaker switching system to 16 outlets. 4×Revox B77;2×
Revox A77 reel to reel tape systems.6×Shure SM58. Speakers:8×Electrovoice 512-1 100w, 4×Wharfedale 100w,3×Tannoy Puma.

Stage(McC arthy):End stage,perfoming area
5.95m×3.66m,variouslevels.Fixed grid 3.67m.
Lighting:Board Pulsar30×2preset,30×patch to30×
1. 2kw dimmers.Lanterns from stock.
Sound Equip:Seck12:2 mixer.Cambridge Audio Amps.Tannoy Lynx speakers.
     劇場データは、BRITISH THEATRE DIRECTORY より


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柴田

はじめまして。柴田と申します。
現在,大学で修士課程に在学しています。
劇場論に非常に興味があり,先生のブログにいきあたり
楽しく読ませて頂きました!
演劇の専攻をしている訳ではないので,基本的な知識を
得ることが出来る本などを色々探しています。
もし,可能でしたら劇場論などを勉強できる本など紹介
していただけないでしょうか??
宜しくお願いします!!!

riebutz@yahoo.co.jp
by 柴田 (2007-10-22 00:16) 

千早正美の仕事部屋

コメントありがとうございます。
了解いたしました。
メールアドレスをお知らせ下さい。
資料等ご紹介致します。
by 千早正美の仕事部屋 (2007-10-24 10:57) 

柴田

ありがとうございます!!!
メールアドレスは,
riebutz@yahoo.co.jpです。
よろしくお願いします。
by 柴田 (2007-10-24 23:17) 

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