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劇団四季キヤノン・キャッツ・シアター [劇団四季]

 2010年11月11日、劇団四季キヤノン・キャッツ・シアター1周年おめでとう。これにより、劇団四季『キャッツ』は、日本上演、通算27年目を迎えました。

以下の記事は、日本照明家協会雑誌2010年1月号・№475に掲載したものです。
  ※一部写真・照明図面などは、ブログのため割愛いたしました。(本誌は掲載あり)
 ※本誌をご希望の方は、日本照明家協会までご連絡下さい。
一部・1250円      http://www.ldeaj.or.jp/

 社団法人 日本照明家協会 〒169-0073   東京都新宿区百人町 1-23-26 ミナミビル
 ℡ 03-3363-7680  fax 03-3363-7890

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 『劇団四季キヤノン・キャッツ・シアター』
                           千早正美

 ミュージカル『キャッツ』は、T・S・エリオット原作「ポッサムおじさんの猫行状記」を作曲家:アンドリュー・ロイド=ウェバー、演出家:トレヴァー・ナン、プロデューサー:キャメロン・マッキントッシュによってミュージカル化された作品で、様々な猫たちの生き様が楽しく描かれています。        
 初演は1981年5月11日、ロンドン・ニューロンドンシアターで、21年間(8,950回)のロングランを記録し閉幕しました。ニューヨークでは、ロンドン開幕から一年半遅れの1982年10月7日ブロードウェイ・ウィンターガーデン劇場で開幕し18年間(7,485回)の公演を行い閉幕しました。1982年のトニー賞では、最優秀作品賞、最優秀演出賞、最優秀ミュージカル脚本賞、最優秀作曲賞など8部門を受賞しました。
 その後、イタリア、ドイツ、フランス、ベルギー、メキシコ、韓国など36カ国で上演されました。今後もオーストラリアやフィリピンなどで上演が予定されていて息絶えることなく怪気炎を上げています。日本初演は劇団四季によって、1983年11月11日西新宿(淀橋浄水場跡地・現都庁付近)に特設テント劇場で開幕しました。以後、大阪・名古屋・札幌・福岡・広島・仙台・静岡など全国各地でロングラン公演を行い多くの観客を動員し魅了してきました。
 仮設テント劇場からスタートして26年、劇団四季技術部スタッフ陣の総力によって公演ごとに劇場建設の開発改良が行われ『キャッツ』専用の仮設劇場になりました。『キャッツ』専用劇場としてのノウハウや技術力が、今や公共文化施設での上演に大きな影響を与えているのも劇団四季だからなしえたのでしょう。
また、静岡市民文化会館での公演(2003年)では、「シアター・イン・シアター」方式(劇場の中にもうひとつの劇場設備を入れ込んでしまうシステム)を採用し、公共文化施設での公演を可能にしたことです。
 今回の劇場は、横浜開港150周年記念事業の一環として実施された企画で「みなとみらい21地区」に建設され工事開始は、2009年6月。5ヵ月間とうい短い期間で工事が進められ、2009年11月11日初日を迎える運びとなりました。前劇場(東京・五反田2004年11月11日~2009年5月3日)にあった2階客席部分を廃止し1階客席として、1997年の札幌公演以来12年ぶりの専用劇場となっています。『キヤノン・キャッツ・シアター』はすっきりとした外壁で、劇場内は専用劇場に相応しい作りで無駄を省き効率良く設計されています。
 舞台は、古代ギリシャ劇場を感じさせるオープンステージ形式(舞台と客席が同空間に共存している)で、円形劇場のように舞台を囲む客席は220度に開いて設置されていて前舞台から最後列までの視距離が約19.5mでとても観やすく出来ています。
また、舞台装置(猫から見ての大きさを表現するため3倍に作ってある)が、舞台上と客席の壁面にも設えられていて独特のキャッツワールドを醸し出しています。多くの塵は工房にて手作りで製作されましたと、舞台監督の吉野氏が語ってくれました。
プロセニアム形式の劇場空間と比べると、どの席からでもスペクタクルな演出を楽しむことが出来、親近感があり、また臨場感のある舞台空間にきっと満足させられます。
舞台装置の一部には、オープニングの曲に合わせて回り舞台(回転席)がゆっくり回ります。他にも歌舞伎演出技法(戸板返し)などが取り入られていてアナログとデジタルの技術が上手く融合し表現されているのも見逃せません。神出鬼没で縦横無尽に駆け巡る猫たちは、いろいろな個所から登退場出来るように舞台も工夫がなされています。

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照明設備(調光ユニット)は、丸茂電機社製のゼムツアーⅡ(20A×36Ch)が多く設置されています。背面を見ますとパッチコードでユニットと結線されていて、ソカぺックスの
ケーブル(マルチ)を差せば回路が取れるようになっています。これは中都市公演を行ってきた経験から、仕込み軽減化の発想で特殊仕様にしたとの事です。

調光操作卓は、grandMA full-sideとgrandMAlightが、客席後方に設置されています。
<電気容量>
■キャットウォークー
3相4線 90kVAが上下2面づつ
3相3線 60kVA(下手) 100kVA(上手)
■奈落3相4線 90kVAが上下2面づつ
■センターピン仮設電源盤
3相4線20kVA(1kwピンを使用)
■使用ユニット台数はゼムツアー●(2kw)×13台
キャディマー(3kw)×5台
総容量 3相4線は437kw
3相3線は36kVA

この作品の内容は、満月が輝く都会の塵捨て場に群がる猫社会を描いています。ジェリクル舞踏会に集まってきた様々な猫(おばさん猫、金持ち猫、鉄道猫、老いた役者猫など)の生き方を紹介しますが、老いた娼婦猫グリザベラはなかなか仲間に認めてもらえません。グリザベラの歌う「メモリー」はキャッツのナンバーで最も有名でヒット作になったことはご存知の事でしょう。歌、踊り、照明、美術、全てを楽しむ事ができます。
照明は夜中から朝に掛けてのバリエーションを大事に表現しています。舞台や客席内の照明器具は、一般的な器具から最新技術を駆使した器具、そして電飾や星球などが多く仕込まれています。横浜公演の照明の仕込みに要した日数を伺ったところ、吊り込みが1週間程、フォーカシングが三日間、照明あわせが3日間で、データーは、五反田で使用したものを基本とし、一部修正を行ったとの事でした。
前回の五反田公演からムービング(バリーライト・VL3000・VL2402・VL1000)が使用され、今回新たにMac700とカラーチェンジャー(LDR Xpress19)が追加になっています。また、客席後方上部のフォロースポットルーム(キャットウォーク)の角度がとても良い位置に設計されています。
『キャッツ』のバックステージを司るスタッフは、演出部6名、照明4名(オペレーター1名、センターピン3名)、音響2名、衣裳2名の計14名で行われています。

キヤノン・キャッツ・シアター概要
所在地:横浜市西区高島1-2-3
敷地面積:約4,205m2 客席:1,096席
視距離:1階最後列まで約19.5m(前舞台から)

この度の視察に関しまして、快くお引受け頂きました四季株式会社及び『劇団四季キヤノン・キャッツ・シアター』のご案内をして下さった技術部舞台監督吉野亘氏、照明阿部真生氏、資料などのご手配をしてくださった東京オフィス広宣部、また、照明仕込み図をご提供頂きました当協会副会長・照明デザイナー沢田祐二氏をはじめ、多数の方々に大変お世話になりました。この紙面を借りてお礼を申し上げます。
現在、シルク・ドゥ・ソレイユなどをはじめ、専用劇場として上演をしている芸術団体が数箇所あります。今後機会があれば是非、他の専用劇場も視察を試みたいと思います。

公演告知
作品名:劇団四季ミュージカル『キャッツ』
会 場:キヤノン・キャッツ・シアター
(横浜市西区高島1丁目2番3号)
お問い合わせ:劇団四季東京公演本部 03-5776-6730
チケット予約:インターネット/ http://489444.com
電話予約/劇団四季予約センター
0120-489444


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