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最近感じたこと [劇場]

  
 テレビの生放送番組やコンサートなどで使用され、多くの人々に親しまれた シブコウ こと、渋谷公会堂が2015年10月4日閉鎖された。老朽化により建替え工事を行うためだ。大型集客施設である埼玉アリーナ、横浜アリーナなども来年改修工事が予定されていて、都内及び近郊でも同様の理由で閉館・休業する施設が多くある。
 既に青山劇場、日本青年館、五反田ゆうぽうとなどが閉館し、これから日比谷公会堂や中野サンプラザホールなども改修予定となっている。そして昨年2月に紀伊國屋書店が運営するサザンシアターが閉館されると報道され、演劇界に衝撃が走ったが、現在は高島屋と契約更新合意で運営が可能となり一段落だ。
  しかしバレエやオペラ上演が可能な劇場が不足しているのも事実だ。劇場からの文化発信はどうなるのか、芸術の発表の場は必要だろう。これからの芸術分野において深刻な問題である。 

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写真:閉館になった青山劇場の楽屋口

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『教育機関の劇空間 日本大学芸術学部 中ホール』 [劇場]

テクニックス
『 教育機関の劇空間 日本大学芸術学部 中ホール 』

この記事は、日本照明家協会雑誌2010年10月号・№.484に掲載したものです。
※ 一部図面などは、割愛いたしました。
※ 本誌ご希望の方は、日本照明家協会までご連絡下さい。
 一部・1250円   http://www.ldeaj.or.jp/

公益社団法人 日本照明家協会 〒169-0073 東京都新宿区百人町 1-23-26 ミナミビル
℡ 03-3363-7680  fax 03-3363-7890

         
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                             写真:劇場入口

 現在、大学・短期大学・専門学校・高校などで劇場・ホールを所有している教育機関があります。それらには、京都造形芸術大学『春秋座』、東京芸術大学『奏楽堂』、大阪芸術大学『芸術劇場』、桜美林大学『プルヌスホール』、明治大学『アカデミーホール』、徳島文理大学『むらさきホール』、昭和音楽大学『テアトロジーリオショウワ』、東北大学『東北大学百周年記念会館 川内萩ホール』、尚美ミュージックカレッジ専門学校『尚美バリオホール』、武蔵野音楽大学『ベートーヴェンホール』、大阪府立東住吉高校『実習棟』、埼玉県立春日部高校『音楽ホール』などで、それぞれが特徴のある空間を生かし創造・発表の場として利用されています。

今回紹介する劇場は、日本大学芸術学部江古田キャンパス整備事業の一環として全面改築が進めらていた『芸術学部(演劇学科)中ホール』です。
前劇場『中講堂』は昭和40年代前半に建設され40年数余年、演劇学科の中心的な教育施設として照明実習や舞台総合実習などに活用され、演劇や舞踊など多くの舞台作品が発信されてきました。また、この舞台から巣立ち業界で活躍している俳優や舞踊家・照明家・美術家・演出家・劇作家など少なくありません。
この度、平成22年3月芸術学部・北棟(演劇学科)の建物が完成し棟内には、演劇ホール(中ホール・小ホール)大道具制作場・実習室・楽屋・研究室などがあります。
 4月18日、中ホールの開場式・こけら落しとして『三番叟』が催されました。
新しいキャンパスは、街と一体化のオープンキャンパスで芸術総合学部として生まれ変わり、最新設備を備えた劇場は芸術の発信基地として豊かな芸術創造を目指してゆく場となる事でしょう。

『日本大学芸術学部中ホール』         
建設の基本方針
先述したように、キャンパス整備事業の一環で建物の老朽化に伴い建設され、その基本方針は、舞台芸術を専門とする教育機関の設備としての機能を生かした、豊かな感性を養うための活動の実践を前提としています。また小規模な講演会や学会発表、演劇学科の実習発表などの拠点として整備されました。 
 当学科は昭和25年、学科が創設されて間もなく、遠山静雄師を迎えて舞台照明(舞台美術を含む)の講座をはじめて開講しました。その後、昭和43年学則改正に伴いコース制度を導入して以降、近代演劇を中心とした「照明教育」に重点を置いてきました。
 舞台照明コースの教育理念は『舞台照明の構成と表現について基本的訓練を通じて学び、そのための基礎理念・方法論・技術・電気工学・照明デザイン、機器の操作方法などを身につけ、実習によって実践的に創作していきます』をモットーとしています。
 演劇学科には、舞台照明コースの他に劇作・演出・演技・装置・日舞・洋舞・企画制作のコース(全8コース)があります。各コースが参加して創作過程を学ぶ舞台総合実習(演劇・日舞・洋舞などの発表公演を行う)があります。その実習(表現方法と技術)を通じて実践活動を体験させていきます。日常的に舞台創造活動が展開できること、これが大きな骨格になっています。

施設の概要
『中ホール』は、一般劇場に劣らない舞台空間で音響・照明・舞台機構などの設備機能を充実させいます。芸術・文化活動の施設として様々なジャンルに対応出来る多目的ホール(演劇と舞踊が主目的)で、且つ学生が使用するコンセプトに添った安全性や機能性を重視した、使い勝手の良い空間です。
舞台は、プロセニアム形式でインナープロセニアムにより間口幅及び開口高さを可変することが可能です。間口10.8m(6間)~ 15.6m(8.6間)建端4.5m(2.5間))~7.2m(4間)奥行12.6m(7間)
吊物機構は、手引きを中心とした手動及び電動のカウンターウエイト方式を採用しています。
手動:美術バトン×16、一文字幕×4本、袖幕×3本、引割幕×2本、大黒幕×1、ホリゾント幕×1             
電動:昇降プロセニアム×1、緞帳×1、暗転幕×1、ライトバトン×4本、
アッパーホリゾントライト×1、美術バトン×5本
客席は電動のみ:プロセニアムライト×1、スピーカーバトン×2、客席バトン×3本
吊物機構には、音響反射板と映写スクリーンを排除したことにより、各バトンの間隔がゆとりのある配列になっています。
 舞台床は、釘打ちが可能です。照明用床回路はローアーホリゾント回路を除き可搬型調光装置を使用することで上手・下手の床回路を排除しました。但し、コード収納のピットはありません。
 舞台上手奥にダムウエーター(小型リフト)が設置されていて、可搬型調光装置や照明機材をギャラリーに運搬するのに役立っています。

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                   写真:ダムウエーター

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                      写真:可搬型調光装置

 客席はワンスロープ形式で収容人数249席と少なく、大きめの座席で集中して観劇できるコンパクトな空間(長方形平面)です。コンパクトな空間は、隅々まで役者の声が行き届き臨場感を醸し出す劇場となっています。

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                          写真:舞台より客席を眺める

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 写真:客席上手後方より見た舞台

調光装置
大学紛争以降の中講堂に設備された調光装置は、3kw・30本・3段プリセット・強電パッチ方式でした。老朽化につれて調光カーブが乱れユニット調整をした記憶が残っています。昭和57年、システム改修及び一部回路増設の工事が行われ電子クロスコネクション位相制御方式・4kw・60本・6段プリセットに改修されました。その後、DMX512がに支流になったことにより、教育面を考慮して既存ユニットとインターフェイス(DMX変換)使用によるコンピュータ調光操作卓・パオリスⅡを導入し、劇場閉鎖(今春)まで使用してきました。
今回の中ホール照明調光装置は、各種の演出意図やプラン要求に応じた制御操作ができます。
システム概要
調光システムは、調光回路として演出用調光回路:2kW×208回路(2kW×188回路+LHのみ3kW×20回路)と客席用調光回路:2kW×20回路及び直回路からなる強電系と、それらを制御する弱電系により構成されています。
操作系は、80本×3段プリセットによる手動再生方式とコンピュータ制御によるメモリー再生方式の併用操作機能を有する調光操作卓の他、舞台袖操作器で構成されています。

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                              写真:調光操作卓

定 格
電源方式 3相4線 105v/182v 50Hz 360kVA
接続機器:照明主幹装置 総主幹
     単相3線 105v/210v 50Hz 45kVA
接続機器:持込機器用電源装置 照明主幹
     3相3線 200v 50Hz 40kVA
接続機器:持込機器用電源装置 動力主幹 
調光方式 位相制御方式
操作方式 弱電操作による手動/メモリー再生操作
対象負荷 照明電源:白熱灯
     動力電源:3相モータ
構成機器
調光装置・調光装置主幹装置・照明分岐装置
調光操作卓(80本×3段プリセット、メモリータイプ)LICSTAR-IV Type J
プリセットフェーダ  80本×3段
グランドマスターフェーダ 1式
サブマスタフェーダ 20本×20ページ×6バンク、タッチスイッチ付き
タイムウイール     1組
GO STOP REV    1組
フリーフェーダ     10本
メモリーシーン      1000シーン
ムーブ クロスフェーダ  1組
パッチ操作部       1式
外部記憶装置(MO FDD)1式
客席調光操作部      1式
 時間設定スイッチ    1式
 上限・下限設定フェーダ×各1組
 フェーダ       ×10本(フリーフェーダと切替)

DMXパッチ装置
舞台袖操作器
持込卓用コネクタボックス
可搬型調光器(20A×12回路)AL-CBDS2-10212-1   8台
可搬型調光器(20A×3回路)AL-TUIPR-10203-2   10台
負荷装置
プセニアムサスペンションライト×1 
2kW×24回路 直6kW×2回路 直1.5kW×1回路 LAN×1 DMX-OUT×2
サシペンションライト×4列(1SL~4SL)
2kW×24回路 直6kW×2回路 直1.5kW×1回路 LAN×1 DMX-OUT×2
アッパーホリゾントライト
2kW×24回路
シーリング
2kW×24回路  直1.5kW×1回路 LAN×1 DMX-OUT×1
フロントサイド(上手・下手)
2kW×5回路 直1.5kW×1回路 LAN×1 DMX-OUT×2
その他:ギャラリー・直などを含む負荷回路は282回路です。

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                         写真:照明設備・サスペンションライト


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                      写真:下手フロントサイド
 
照明操作卓及び音響操作卓は、客席後方に設けられベストな状態で劇空間を確認することが出来ます。照明合わせや、音合わせ、舞台稽古などにおいてオペレーター(学生)に対して指導教員が直接指示出来るように教育的配慮がなされています。

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                              写真:ロビー

付記
紙面の都合上、小ホールを紹介することが出来ませんでした。
小ホールは、ブラックボックスでオープンステージ形式。照明設備(バトン)は、昇降式格子型トラスになっています。

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『いわき芸術文化交流館アリオス』 [劇場]

 日本全国には、公共文化施設としての劇場や民間の劇場を含めると約3,000程の劇場施設が存在します。劇場建設ラッシュが下火になったとは言え、新しい劇場が建設されています。昨年『いわき芸術文化交流館アリオス』におじゃましました。

  この記事は、日本照明家協会雑誌(2009年11月号)に掲載したものです。

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      公演側より見た劇場全景

 『いわき芸術文化交流館アリオス』
                                                 千 早 正 美

 『いわき芸術文化交流館アリオス』は、上野からJRにて約2時間。「いわき」駅から徒歩15分の地にあります。ガラス張りの大きな建物がひと際目立ち、一階エントランスを入るとレストランやショップなどがあります。市民の人々が入りやすい自由空間をつくっていて、一瞬ロンドン・ナショナル・シアターを思い浮かべてしまいました。約40年間、いわき市民の方々や舞台芸術関係者に親しまれた旧平市民会館の跡地に建設された新劇場のグランドオープンは2009年5月です。施設構成は、大ホール、中劇場、小劇場、音楽小ホール、大・中リハーサル室、スタジオなどの他、レストランやショップなども配置されています。二階カンティーネ(フリースペース)には、旧平市民会館で四十数年間使用されたピアノ(スタインウェイ)が展示されています。このフリースペースは、一般の市民の方々が自由に使用できる場所で、催しものがなくても開放されています。また、カスケード(ロビー)には、壊した旧平市民会館の緞帳の絵を写真で撮り陶板したものが飾られています。とても開放感があり採光も良く明るい館内がとても印象的でした。

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           カスケードに設置された美術陶板(旧平市民会館の緞帳図・棟方志功作)

 PFI事業で建設
 
 この劇場は、PFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)事業によって建設されました。PFI事業とは、民間資金の活用による公共施設等の整備や建設に関する事業の実施システムのことです。
 アリオスの場合、コスト面で一般的な方法で施設整備を行った場合と比較すると、設計、建設、そして15年間の維持管理コストを含めて、およそ25%、52億円安く出来上がったとのことです。従来のように市が劇場を建てて、運営も行なっていくと、230億円程掛かります。それが180億円で済んでいるのは、縮減効果がもたされたとのことです。
 このPFI方式は、すでに学校や塵処理場など全国各地で行われていますが、ホールや劇場などの文化施設では今のところ杉並公会堂とアリオスだけしか行われていません。しかし、杉並公会堂の場合は運営も請け負った会社が建てた後も継続して行っています。アリオスの場合は、「PFIなのに、なぜ『直営』?」というところがみそで、これから15年間建物や設備、備品等の維持と保守・管理に関しては建設会社が行い、実際の事業の運営は、市が直轄で行なう方式にしたところが杉並公会堂とは違う点です。この方式は日本で初めての試みでPFIのメリットと言えます。

 施設の概要
  <大ホール>

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       客席下手後方より見た舞台

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       吹奏楽の準備で反響版・二重が準備されていた舞台

 大ホールは、クラシックコンサートやオペラなどの公演に最適な空間になっています。それは音楽を良く聞かせるための音響設計が施されていることです。特に客席内の壁は、音が反射するようにできています。その他、演劇、舞踊、能・狂言、歌舞伎、講演会など様々な用途に対応できる多機能舞台になっています。客席は三層バルコニー形式(馬蹄形)の象徴的なホールです。
 この大ホールは、すでにNHK交響楽団と提携されているようで、毎年1回、定期公演が実施されると伺いました。N響が定期公演を行う契約を交わしているのは、いわき市を含めて全国で6都市のみとのことです。
吹奏楽などの場合は、四階客席内の壁前面に吸音板が下りるようになっていて反響を少なくするようにできます。
 特に可動式音響反射板(反響板)は、他の劇場に類がない構造になっていて随所に工夫がなされていました。音響反射板は、基本的に舞台上部に収納されますが、他のバトンに干渉しないようになっています。そのほか天井反射板の一部は、舞台後方上部やプロセニアムアーチの前に収納できるようになっています。
 また、演奏会の規模によって、中編成、大編成、拡張編成と可動させて使用することができます。側面反射板や天井反射板を拡張することによって、広い空間にすることができます。

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 写真手前にみえるのが上手側面反射板(中規模の反射板セット時は未使用のためにこのようになっている)

 音響反射板によって舞台を囲んでしまうと、空気の流れが悪くなり熱くなってしまうことがあるので、正面反射板裏側に空調用のホースが設置されています。これにより、舞台の空気の流れが通るようになっています。
 また音響反射板の総重量は100tあり、正面反射板が60t、側面反射板(上・下で)30t、天井反射板が10tです。正面反射板は、銀行の金庫扉のように感じました。舞台で手を叩いてみると音の通りが良く、クオリティーの
良さを感じました。
 舞台袖(上・下)床には、どぶ板(ピット)が設置されていました。とかく袖中は、セットが組まれていたり、スポットライトがあったりといろいろな物が置いてあります。また、照明や音響のコードがとぐろ状態になっていて、足の踏み場がないような状態になりがちです。そんな薄暗い舞台袖は、常に危険にさらされています。このピットを使用することによって、照明や音響のケーブルを露出させずに、スポットライトなどをセッティングできることは良いことです。出演者などの足にコードが引っ掛からないように配慮されていて感心致しました。客席からの引き込みコードなどもピットに入れ込むようになっています。

 大ホール奈落

 奈落の隅には、楽器倉庫が設えています。楽器倉庫には、スタインウェイ2台と、チェンバロ2台、それからパイプオルガンと全く同じ音が出るポジティブ・オルガンが保管されています。チェンバロはイタリア製でボディーに素敵な模様の絵が描かれていたのが記憶に残っています。
 舞台下に設置されている迫り機構は、カナダ製のスパイラル方式が採用されています。今までの形式とは違って、この方法は地下をあまり深く掘り下げなくて良いので建築コストが安く済むことです。

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          大ホール奈落迫り機構(スパイラル)
 
 舞台:プロセニアム形式(可変)   間口:18.1m~12.7m   奥行:14.6m   高さ:15.0 m~9.0 m
 客席:通常時1705席   最大1840席


  <中劇場>

 中劇場は、プロセニアム形式が基本になっていますが、オープン・ステージ形式にも可変できるようになっています。

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        客席後方より見た舞台
 
 このホールの特徴は、上手・下手側にある客席(サイド・バルコニー)の一部「移動式縦型客席ユニット」、フロントサイド「移動式額縁ユニット」、そしてプロセニアムブリッジも移動できることです。(フロントプラス額縁の横までが一つのユニットになっています。)それらによって、間口を変えることができたり、客席を迫り上げてオープン・ステージの空間(ポディウム形式<センターステージとも言います>及びスラスト形式<スリー・サード・ステージとも言います>)に設定することができます。
 フロントと客席の一部は、ホーバークラフトと同様なシステムで高圧の空気をホースによって本体に送り13tあるユニットを浮き上がらせ、特殊な牽引車のような台車で移動さる方法です。台車は、ハンドル操作になっているので自由に角度を変えることができ、実際動かす人は2名で十分とのことです。このユニットシステムは日本初導入です。
 ユニット未使用時は、ホリゾント幕後方のバック・ヤードに収納します。また、照明ブリッジ三基は前後に移動できるように施されていて、幹線を取り外すことによって、舞台上部後方の専用置場に収納することができます。これによって、吊バトンが尺間隔での使用可能となります。ただしこれらの作業をするためには、緞帳から一文字幕など全ての吊物を外し、舞台上部を空の状態にしなければなりません。撤去と準備時間だけでもかなり掛るとのことです。

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          上手側のフロントとバルコニーのユニット

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          下手側のフロントとバルコニーのユニット

 写真下段は、ブリッジの前後にある電源供給のシステムと移動ユニットです。ブリッジ用は、6台です。予備のシステムが1台あって、それはバトンにも使用することができます。 
 
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   3基のブリッジ電源供給ユニットを前後に動かすシステム(上手側・下手側のシステムの下にレールがあります)

 舞台コンセント(フロアーコンセント)は全部柄立になっていて、切り穴によって奈落からの集中盤から引き回しになっています。これは大ホールと同様にコー ドの散乱を防ぐための配慮でしょう。
バトン関係の昇降は、全て電動でコンピュータ制御になっていて巻き取りウインチ方式が採用されています。ド
イツ・スタティック社製で、昇降時には全く音が出ないとのことです。また、舞台機構関係の操作卓は舞台下手ギャラリーに備え付けられています。バトン関係の操作は安全確認をすれば、照明のキューと同様にゴーボタンで簡単に操作可能になっています。可搬型の機構操作システムによって離れた場所からも遠隔操作で可能になっています。

 客席上部のギャラリー通路には、安全対策のためのLEDが備え付けられています。照明合わせのときには、客電や作業灯を消灯するため照明スタッフの落下防止のためLEDを点灯させています。安全ベルト着用で、レールに引っ掛ければ通路の端から端まで安全に歩くことができます。これはとても良いアイデアだと感じました。

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      LED点灯によって、安全対策を施しているギャラリー

 舞台:プロセニアム形式(基本)   間口:14.4m~10.8mに可変   奥行:9.7m   高さ:7.9m
 客席:可変式 二層バルコニー式


 <小劇場>
小劇場は、オープンステージ形式の空間で様々な公演に対応できる機能が備わっています。舞台面と客席が同レベルになることで演出領域の幅が広がり、小空間でのメリットを最大に活用できます。特に調光操作卓は、丸茂電機さんがアリオス用に開発したものが客席後方に備えられています。一般卓とムービング卓を一緒にできるようにというのがコンセプトです。大ホールと中劇場は、マニュアルは全くなくてこれと同じものが2台並んでいます。
 この調光操作卓は、現在「アリオス」と「座・高円寺」、「新国立劇場中劇場」、「ACTシアター」、の4劇場に入っていますが「アリオス」が最初の設置です。ムービングライトが常設になっていて、照明演出が自在に表現できるようになっています。公共文化施設で、ムービング系が備えられている劇場はまだ少なく羨ましいかぎりです。

 舞台:オープンステージ形式(エンドステージ)    間口:14.6m    奥行:9.1m    高さ:7.8m
 客席:ワンボックス型+両袖舞台   一層バルコニー形式

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      シューティング機能調光操作卓(丸茂電機社製)

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      ムービングライトを点灯してもらいました

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      舞台から見た客席

 この度の視察に関しまして、いわき芸術文化交流館アリオス及びご案内をして下さった舞台技術マネージャー西村充氏には大変お世話になりました。

  いわき芸術文化交流館アリオス
 〒970-8026 福島県いわき市平字三崎1番地の6
 Tel 0246-22-8111 Fax 0246-22-8181

 この記事は、2009年日本照明家協会雑誌11月号・№473 に掲載したものです。
  一部写真・照明回路図面などは、ブログのため割愛いたしました。(本誌は掲載あり)

 バックナンバーご希望の方は、下記へ
  一部・1250円
http://www.ldeaj.or.jp/

 社団法人 日本照明家協会
 〒169-0073
 東京都新宿区百人町 1-23-26
   ミナミビル
 ℡ 03-3363-7680
 fax 03-3363-7890

 
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スティーブン・ジョーゼフ劇場(STEPHEN JOSEPH THEATRE)の新しい空間について [劇場]

1713572 1713541 1713551 1713549 1713552 1713544      上段:スティーブン・ジョーゼフ劇場        中段:ボックスオフィス(左)・ショップ(右)         下段:アラン・エイクボーン氏(左)・スカーバラの城壁と海(右)

 

    スティーブン・ジョーゼフ劇場(STEPHEN JOSEPH THEATRE)の新しい空間について

 1955年、スティーブン・ジョーゼフによってスカーバラの公立図書館の一階に小さな円形劇場が創られ劇団活動が始まりました。(スティーブン・ジョーゼフは、イギリスにTHEATRE IN THE ROUND・円形劇場を最初に導入したことで知られています。)
 1967年スティーブン・ジョーゼフの他界によって、彼の意志を引き継いだアラン・エイクボーンが芸術監督に就任し、劇団のために積極的に作品を提供し且つ演出を手掛けるようになりました。その後、1976年元中学校を円形劇場に改造し、スティーブン・ジョーゼフ劇場の活動の拠点として1995年まで数多くの作品を上演し世に送り出してきました。
 現在の新しいスティーブン・ジョーゼフ劇場は、スカーバラ駅の前にあります。1988年に閉鎖された旧映画館オデオン座を改装して、1996年劇場と稽古場・事務所・レストランなどを有する建物に生まれ換わりました。柿落としは4月24日、エイクボーン作「バイ・ジーブス」で幕を開けました。
スティーブン・ジョーゼフ劇場には、THE ROUNDとTHE McCARTHYの二つの劇場があります。
 THE ROUNDはオープン・ステージでアリーナ形式の劇場で、舞台空間と観客席が一体となってひとつの空間の中に共存しています。舞台を四方から取り囲む客席(404席)は程よい勾配と高さ(多層)でとても観やすく、空間的に一体感があります。また、大劇場と違い俳優と観客との距離が可能なかぎり近づくことによって融和でき高い臨場感と親近感を創り出す空間といえます。
 しかし、アリーナ形式の劇場を使うにはマイナス面も多く、色々な問題点があります。場面転換などの視覚的表現は極めて難しく、大きな舞台装置や小道具などを飾る事も出来ません。また、音楽や効果音が空間の中心近くに集中しすぎて音響的に不利を生じる事さえあります。ですから演出的視点から様々なことを把握して、俳優の登退場や全体構成を考えなければなりません。これは、大変重要なことです。
  客席で開演時間を待っていると、不思議とこの空間に吸い込まれていた事に気がつきます。この空間でドラマがどのように展開していくのか、視覚的にどう魅せてくれるのか気持ちがわくわくしてきます。エイクボーンはこの知りつくした劇場空間を常に有効的に使用し、観客に最高の感激を与えるべく劇的瞬間を模索しながら演劇創造を楽しんでいるかのように感じとれます。 
  舞台には、6m×6mの迫り《リフト》が設備され舞台転換をスピーディに行うことも可能です。(稽古場からセットを上げる事もできます。)この広さは、以前のWEST WOOD THEATRESと同空間で創られている事は、エイクボーンがスティーブン・ジョーゼフの意志を頑なに守っている事が理解できます。
 舞台の天井は、(照明グリッド・The mesh lighting access grid /カナダ製のネットでテンションワイドグリッドと言われている。)トランポリンが備え付けられている状態で、ネット上を自由に歩く事ができるようになっていて容易に照明の仕込みや操作(フォーカシング)ができるようになっています。(舞台が丸見えで宙に浮いている感じで高所恐怖症のスタッフには怖いかもしれません。)
  このシステムはスティーブン・ジョーゼフ劇場において重要なものであり、劇場の特徴ともいえます。これは現在イギリス国内に3箇所しか設置されていません。
(STEPHEN JOSEPHTHEATRE・SOUTHAMPTON・ROYAL ACADEMY OF DRAMATIC ARTです。)RADAの劇場では、20名程のスタッフコースの学生が一堂にあがって照明実習を行なっていると、ニコラス・バーター校長先生が説明をしてくださりました。慣れれば非常に効率が良くスピーディ且つ安全に作業ができるとの事でした。日本の劇場でも使用すればとても便利だと思いますが。特にこれから建設する劇場は考えてみる価値はあると思います。特に、天井からの落下防止(安全対策)にもなりますし、劇場関係者は是非このシステムを必見です。  
 THE McCARTHYはエンドステージ形式(プロセニアムに近い形になっているが、しかしプロセニアムはまったくなく大きな空間の中に舞台と観客席が設けられています。)の空間で週末には映画館としても利用されています。
客席数は165席、旧オデオン座で使用されていた椅子をリフレッシュして設置するなど、暖かさと親密さを感じさせられる劇空間です。  
 その他劇場内の施設には、調光室、音響室、ミーティングルーム、楽屋、衣裳室、稽古場、小道具倉庫、道具製作場、ボックスオフィスなどが効率よく配置されています。レストラン・バー・ショップなども充実していて地元の人々にも幅広く利用されています。また、劇場中心部には吹き抜けになっている中庭があり、この吹き抜けから太陽の自然な光がガラスを抜けてグリーンルームを照らします。グリーンルームとは、スタッフや俳優たちが自由にコミュニケーションを取る憩の場で、楽屋やスタッフルームと違い劇団のメンバー達が自由にコーヒを飲んだり、読書をしたり、編物をしたり、それぞれが寛ぐ談話室のような所です。この場所から、それぞれの部屋(事務所や楽屋)に行けるようになっていて機能的な設計になっています。日本の公共文化ホールや民間の劇場の楽屋は、プライベートを守ることでそれぞれが個室に入りっぱなしになってしまう傾向がありますが、時間のある時に出演者やスタッフがグリーンルームで交流を図る事は非常に意義深いことであると感じます。
このような場所を日本の劇場でも増やしてくれることをせつに望みます。 
 付記:スティーブン・ジョーゼフ劇場の建設にあたって、日本大学芸術学部・日本大学芸術学部演劇学科では寄付を致しました。そのためロビー壁の寄付者一覧ボードには大きく大学名が、また客席椅子のプレートに学部名と学科名が刻まれています。

劇場データ
ADMINISTRTION:
Props:Yorkshire College.
Lessees:Scarborough Theatre Trust Ltd
Artisti Director.Alan Ayckboum
Financial Administrator.Keith McFarhane
Theatre Manager.Zoe Naylor
Production Manager.Alison Fowler
Press Officer.Jeannie Swales
Marketing Officer.Rob Lines
Policy:Repertory.April to January.New plays everyseason.
Perfs:7.30p.m;(Sat.3p.m.&7.30p.m.)
Seats:The Round 406 max;McCarthy 165max.
Restauant,Bar.
Studio Theatre seats 75for Lunch-time and Late Night plays and music.
TECHNICAL:
Stage(The Round):Perfoming area 6.7m×6.1m.
3Vom entrances.Fixed grid 4.26m.
Lighting:Strand Gemini 2+withFXpanel,floppy disc,130 patches to 60×2.5dimmers.Lanterns: 52×500w Fresnels,22×1kw Fresnels,
33×100w Profiles,12×1kw Profiles,16×650PC‘s,3×Par64,10×500w Noctume Floods,6×CCT colour wheels.
Sound Equip:DDA D Series 16-8-2 via Matrix to 8×H/H TPA 50w amps via speaker switching system to 16 outlets. 4×Revox B77;2×
Revox A77 reel to reel tape systems.6×Shure SM58. Speakers:8×Electrovoice 512-1 100w, 4×Wharfedale 100w,3×Tannoy Puma.

Stage(McC arthy):End stage,perfoming area
5.95m×3.66m,variouslevels.Fixed grid 3.67m.
Lighting:Board Pulsar30×2preset,30×patch to30×
1. 2kw dimmers.Lanterns from stock.
Sound Equip:Seck12:2 mixer.Cambridge Audio Amps.Tannoy Lynx speakers.
     劇場データは、BRITISH THEATRE DIRECTORY より


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Minack Theatre [劇場]


一人の女性によって造られた野外劇場「ミナックシアター」
   Minack Theatre

  ロンドン・パディントン駅から列車に乗ること約6時間、イギリスの西端コーンウォール州ペンザンス駅に到着。バスに乗り換え40分程乗りポースカーノで下車。坂道を歩くこと15分。絶景の劇場「ミナックシアター」に。この劇場は、一人の女性ロウィーナ・ケイドによって40年の歳月を掛けて造られました。断崖絶壁の急斜面に造られた客席の背もたれには、劇場の歴史(上演された演目)が刻まれています。芝居好きの女性が90歳で亡くなるまで造り続けた劇場は無限に広がる空間、風と空と海の自然が舞台背景になり夕日に染まりながら芝居を観ることの出来る最高の場所です。イギリスに行かれた折に是非訪ねてはいかがですか。 但し、劇場周辺にはB&Bが数件しかありませんのでホテルの予約は確実に取ってからお出掛け下さい。(ロンドンへの日帰りは無理です)
  http://www.minack.com/


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