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舞台芸術における国際交流の難しさ [ミュージカル]

     舞台芸術における国際交流の難しさ                                                                                                                                                                              千 早 正 美

 現在、世界各国で、日本の歌舞伎・文楽・日本舞踊・演劇・モダンダンスなど、さまざまなパフォーミ ン グ・アーツが頻繁に行われています。それぞれの活動は、その道にたずさわる人々の積極的なるエネルギーによって、困難な条件をクリアしながら、いわゆる国際交流が行われています。だが、こう した交流活動が日本の芸術文化の国際的活動として、末永く発展するかどうかは、甚だ疑問です。
 しかしこの数年、各国で国際交流を中心としたイベント(ジャパンフェスティバル)が大々的に開催されています。このフェスティバルも含めて、いろいろな催し物が各国で上演興行されて異文化の中で成功できたのは、企業という名の冠があるからこそといえます。経済大国日本といわれながら、芸術文化に対する国家援助はまだまだヨーロッパ諸国から比べるとはるかに少ないからです。ここ数年企業の芸術文化に対する理解が深まり、各種イベントや国際交流などに資金援助が行われるようになったことは、誠に喜ばしいことです。長期間に渡る海外演劇公演などの場合、国際交流基金だけの援助で賄うことは難しいことです。その為にも、企業という名の冠が国際交流においてますます必要なことなのです。                                                                              筆者は数年前、短期間ですが、メキシコ国立自治大学付属芸術センター(UNAM)を中心にメキシコシティの劇場群を訪問する機会に恵れました。国際交流基金も大きな助けになりましが、一個人という枠の中で出来る限りの国際交流(照明技術指導び劇場技術者との情報交換等)を行ってきたつもりです。メキシコの照明システムは、各劇場によってまちまちですが全般的にみて、かなり日本と比較すると遅れています。最近、イギリスやアメリカからのミュージカルも上演されるようになり、その影響もあって、最新型の調光システムや照明機器が使用されている劇場もありました。だがそれらはごく一部のことであり、小劇場などは相変わらず、古い変圧器式の調光装置を使用しているところもありました。すべて、経済的な理由です。UNAMを中心とした劇場技術者達は、日本の舞台照明技術者との交流を望んでいるし、将来的には日本の照明システムのノウハウを吸収したいと真剣に願っています。また、メキシコでは、劇場間の連絡が密に取られていないようで、スタッフ間の技術的交流もあまり積極的に行われていないように感じました。その為、日本と同様なスタッフ協会『照明家協会・舞台監督協会・音響家協会など』を是非設立させたい、これが志のある若い人達の考え方です。そして彼らは、日本との技術交流をきわめて強く期待していることを肌で感ました。しかし、メキシコと日本の経済情勢は余りにも水準が違う為、技術的交流の難しさを痛切に感じられる昨今です。
 先進国日本では、今後国際交流を行うことの大切さや、国情に対する理解をいっそう深めて行くことなどが大きな課題だと思います。


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